ゴブラン織りは、つづれ織りの一種です。古代オリエントに遡る、「つづれ織り」のタペストリー（壁掛け）は、１５世紀以後のフランダース地方（現在のベルギー、及びフランス北部）の主要都市の最も重要な産業となり、ヨーロッパの王侯貴族の城館を飾るものとなりました。幾多の工房で生み出されたそれらの織物は、油絵のような奥行きのある表現と色彩で、高い芸術性を持ち、後世に残る作品を創り出してきました。また、１６世紀後半パリ近郊（現在はパリ市内）に、王立ゴブラン製作所が設立されたことで、「ゴブラン織り」とはその製作所の名を冠したものとなりました。

その後１９世紀初頭に、フランス人のJ.M.ジャカールが織機を開発し、ジャカールの名にちなんで｢ジャカード織機｣と呼ばれるようになりました。ジャカード織物は、近代では壁掛けはもとより、テーブルクロスやクッション等のインテリア用品から、バッグ、小物等のファッション用品に至るまで幅広く用いられています。そして、これらのジャカード織り商品は一般的に「ゴブラン織り」と称される事が多くなりました。

現在、ゴブラン製作所は、フランス国営で一般の売買はされていません。しかしながら、その長い歴史と作品のすばらしさで、「ゴブラン織り」は色彩豊かな厚地のつづれ織りの生地の名称（俗称）として残り、多くの人の知るところとなっています。